愛してる

またビデオメールが始まった

内容は見なくともわかっている。

コンピュータ不調が原因のオートリプレイ。
どうせならもっと面白いビデオならばいいのに、あいにくこの船にあるビデオはこれだけなのだ。

いまどの辺りを飛んでいるの?
危険はない?
ちゃんと食事は三度摂っているかい?
寂しくないかい?

でも貴方は一人じゃない、私がいつも傍にいるから。
愛してるわ。
わたしの坊や...


もちろん一人じゃないさ。
女性型ロボット...柔らかいシリコンボディ達が私を囲んでいる。

振れると目をトロンとさせ、言葉をかけると甘ったれた言葉で返してくる。そして最後は「愛してる...」とささやく。

ビデオの中で愛されたり、機械に愛されても何も感じない。

というより、「愛」って何だ?


涙をためること?
柔らかい体に包まれて眠ること?
暖かい食事を食べる時に言う言葉?
マッサージの礼に言う言葉?

それとも...




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私は人類初の恒星間パイロット。
乳児段階から単独で乗船、ロボットに育てられ・教育を受けた。
定期的なコールドスリープと覚醒を繰り返し、私の寿命以内にアルタイルまで飛ぶという。


私は人類初の恒星間パイロット。
「愛」という概念のない男。