ピーカンの香り

marktheshadow2007-02-22

年令や立場によって嗅覚も変わるものらしい




余りできのよくない小学生の頃....いまもそうだが(笑)...家庭教師の先生にきてもらっていた。
タバコ好きな先生で、母親はいつも両切りピースの缶入りを用意していた。
いわゆるピーカン。


家庭教師の日はイヤで仕方なかったものの、なぜか先生が真新しいピースの缶を開ける時、胸が高まったものだ。
タバコを吸う年令でないものの、缶をあけた瞬間、なんともいえぬ馥郁(ふくいく)とした香りが部屋に漂う。
「大人の趣味の良さ」...まだ言葉にならなかったものの、そうしたイメージが頭を過ぎり、しばし幸せな気持ちに浸ったものだ。
そう、親父もピースの缶入りを吸っていた。
親父のピーカンのアルミニウム皮膜を、見よう見まねであけて最初の一本を手渡す。それだけでなんだか大人になった様な気になったものだ。

ピーカンの存在を知らない人に

ピースの両切りタバコが50本缶に入っているんですね。
その当時から紙箱入りに比べると高かったんですよ。現在の価格は800円昔は缶代分高かった。単に缶に入っているだけでなく、蓋以外にアルミニウムの皮膜が張ってあり、香りを逃さない構造になっているんですね。
そのアルミニウム皮膜を、蓋に仕込んである缶切りであける。
ピースはJTで唯一の「バージニアリーフ」という種類のタバコを使っており、その香りのよさでは断トツの存在。
あけた瞬間、本来のタバコの香り=フレーバーが漂うんですねぇ。
おそらくJT(日本たばこ)の製品の中で一番「高級」な仕掛けを持った特上製品といえるんではないでしょうか。


「私もいつかタバコを吸うんだろうな」そう思った。





タバコの記憶でもう一つ忘れられないのが、親父の匂い。



ガキの頃、親父に近寄ると「なんともいえないタバコ愛好者の匂い」がした。
その匂い....に「幸せ」を感じたものだ。

週中は仕事が忙しく、ほとんど顔を会わせる機会もなく、日曜日もなかなかスケジュールが会わない親父。たまに家にいても、野球好きの親父は運動神経のいい兄と遊びに出かけ、まだ幼く不器用な私とは遊ぼうとしなかった。
寂しい思いをして一人風呂に入っていると、いつの間にかタバコの匂いがし、後から大きな手が背中を流してくれたこともあった。(年に数回の話だが(笑))

その時に親父の存在を感じ、愛情を感じたものだ。




私にとっての「大人の男性・親父のイメージ」とは缶入りピースの香りと、それを愛した男の息の匂いだった。




学校を出て、社会に出た私は(学生時代からであったが(笑))、予想通りタバコの愛飲者となった。一時期は缶入りピースの愛好家でもあった。





そしていま、タバコを止めた。
というより、体調保持のため止めざるを得なくなったというのが本音だ。





タバコを止めて分かったことが一つ。


昔みたいに良い香りのタバコはない。
喫煙者の息に匂いに辟易している。


やはりタバコは缶入りピースに限るのだ。
そして、良いと思っていた親父の息の匂いも、単なる愛情の渇望による勘違いでしかなかったのだ。





皆さん、できればタバコは止めた方が良いですぞ!!
これからの時代、息の臭い人はもてないぞぉ〜
(そういいながらイライラして昨日2本吸ってしまった私だが...(笑))