Sim City

marktheshadow2005-04-29

【バーチャル世界での都市づくり】

いまから20年近く前、「Sim City」というゲームが流行ったのをご存知でしょうか。
Windowsの初期版3.1か出る少し前...OSはまだDosという単一的な制御しかコンピュータで出来なかった時代。NECのPC9800シリーズが日本のPCシェアの80%前後のシェア(オーバーですか?(笑))を謳歌していた時代にリリースされた画期的なゲームでした。
初期版は20〜30の地形マップが用意されていて、そこには海・平野・山間部・湖沼などがあるのです。その土地に現れたあなた(ゲームプレイヤー)は、限られた資金をやりくりして発電所・港・工業地区・商業地区・住宅地区を一区画ずつ、そしてそれらをつなぐ鉄道・道路・その他付帯設備である警察署・消防署・病院・公園などを設定していきます。これが初年度。ほんの小さな集落でしかありません。
その後毎年人口が増えていき、税金が入ってくるようになります。その税金を使ってまた各々の私設などを広げていくのです。まぁ言ってみれば開拓地を切り開いていく先頭を走る市長があなたの役目なのです。5年ぐらいは家が足りないぐらいどんどん人が流入してきますので、税金も潤沢になるのですが、あるところから急に維持費がかさみだします。道路・鉄道の補修・治安維持のための警察署の増設・いざという時の市民の安全のための消防署・病院。もちろん住宅地をどんどん広げるだけでは生活がままなりませんから、商業地区も作っていかなければならない。最初から「発電所と工場」という港の近くになければならないものと、住宅街と商業施設という郊外に作った方が後々固まりとして治安維持がしやすいものに分けて開発できれば問題ないのですが、そうなるとそれらをつなぐ道路や電車の距離が伸び多額の投資が必要となる。仕方ないから、工場・商業・住宅の順番に作っていかなければならなくなります。そうすると...いつまでたっても住宅地区の公害が減らない。。。毎年市民から文句が出始めます。そこからは人口が減りだして税収が下がり、下がった分だけ公共投資ができなくなりますから、だんだんスラム化していく。火事はのべつまくなしに発生し、町の中に廃墟が生まれる。。。そしてある日ゴーストタウンとなって"The End"となるわけです。

えらく長い書き出しになってしまいました(苦笑) 今日は何が書きたかったかと言うと....香港の北部にある中国広東省「シンセン」が、私にとってはSim Cityに見えて仕方ないのです。
本日の写真は、そのシンセンの陸路の玄関口のひとつ「皇崗」のイミグレビルのすぐ北側の空き地です。実は昨年暮れまではここに10階建てほどの多目的商業ビルがありました。その中には「旅籠」(言い方古いですネェ(苦笑))、マッサージ施設、レストラン、その他商店...各ジャンルの施設がビル内に複数出店してお互いに競争していたのです。そこに昨年地下鉄が通ることが決まり、急遽シンセン市はビルを取り壊すことを決めました。テナントのオーナーは高い立退き料をせしめたことでしょう。しかしマッサージ施設の按摩さん達にとっては死活問題。最終的にデモをおこしたのですが、公安に追い散らされその後1週間でビルは解体開始。1カ月もしないうちに更地になってしまいました。その後写真の様な駐車場に。。。駐車場にするならあんなに早く撤去しなくても良かったんじゃないか??とクビをかしげてしまいます。

中国の土地は全て国有地ですから、こういうことが簡単にできます。例えば道路。この10年で国道クラスの道路が北京を中心に放射状に各地に向かって無数に伸びています。どの国にもマネすることができないほど、急激な整備・拡張となっています。シンセン市内でも同様。道路・ビル....立ち始めるとアッという間です。
しかし、私は危惧を覚えます。道路は赤土の上に置かれたセメント。数年すると道路下の赤土が雨で流され陥没しはじめます。ビルも超高層ビルなのに不安定な赤土の土壌の上建設していきます。土地に対してパイル(土台となる鉄筋コンクリートなどの支柱)が充分なのか?10年単位で見ていく必要があると思いますが、いくつかのビルは傾きはじめるのではないだろうか? 往復6〜8車線ある太い高速級の道路には10キロ以上陸橋がないところもあり、ビュンビュン飛ばす車列を自転車・重い荷物を担いだ人々がひょこひょこと渡っています。
最初のころは「車より人命が安いんだ...」などということしか思い浮かびませんでしたが、最近では「この街は本当に未来永劫発展・継続できるのだろうか??」...私が生きている内は問題ないかもしれませんが、その後のことを考えると思い悩んでしまいます。もちろん私が考える以上にシンセン市長はじめ多くの政府高官が日夜考え、改善しているとは思います。いえ、そう信じます。
しかし、他の都市と比べると....例えば北京や上海などは昔から栄え着実に繁栄の土台を築いてきました。が、ここでは無理している感がぬぐえないのです。
そう、最悪のシナリオに転がるかも知れない「Sim City」の様に。

この近くの国境はわずか100m程度の川で隔てられているに過ぎませんが、香港側は鳥類自然保護区で緑につつまれた湖沼のまま。シンセン側は川岸にまで立てられたビルが毎日どこかでスクラップ&ビルト。私は「わずか100mの異界」という言葉が頭から離れません。
文明化という流れが、間違った方向に向かわなければ良いと思うのは私だけなのでしょうか。

【今日の教訓】
 背伸びした幸せよりも、身丈にあった成長が本当の幸せ。少なくとも私にとっては。


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