立って半畳、寝て一畳

marktheshadow2005-04-23

若かったころ、いつも旅をしていた。仕事柄、移動の毎日だっただけだが。夜遅くまでクライアントに引きとめられ、ギリギリまで色んな相談に答え、逃げるように夜行列車に飛び乗る。次のクライアント先まで3時間前後の行程だから寝台車ではなく普通車両。6割方乗り込んでいる乗客達は静かな寝息だけの存在になる。寝るだけの時間が許されていない私は一人乗車口近くに立ちタバコをくゆらせる。月と星が恵む自然のプラネタリウムの中を、私のため息とタバコの煙を残して列車は進む。
山の中を開き、断崖を突っ切り、海辺に沿って...どこまでも。永遠と思える幸せな孤独が続く。
いつも「不思議」に思う光景にでくわす。どこにいても、必ず人間が暮らしている証と思える明かりがが私の目に飛び込んでくる。どんなに山の中であろうと、孤立した明かりであろうと星明りとは全く別の「暖かさ」がその中にある。
それぞれの明かりには、それぞれの生活があるのだ...『山小屋で暮らす、シチューの香りのする家族』『孤独に耐えて勤務する観測所』『狩のための山小屋』『漁から帰る夫を待つ団欒』....そう思うと、寂しい訳でも悲しい訳でもないのに目頭が熱くなる。「いつかこの人達と会ってみたい。。。そのために今私は旅しているのだろう」いつも心の中でそうつぶやいていた。

『家』...心のありか...存在理由...未来...言葉の持つイメージの多元さに酔いしれていただけなのかも知れない。

[書きかけの小説からちょっと流用してみました。]

さて、話はガラリと香港に変わって[ガラガラガラァ〜(笑)]
香港面積は1,097k㎡、東京都の約半分です。そしてその多くは山間部。日本と同様にわずかな平野に人口が集中しています。

と、まぁこんなことは以前にも書きましたが、本当香港は狭い。
年々住環境は改善されてきているものの、広い家に済める人はまだまだ多くはありません。
外人向けの不動産屋さんの広告には「200㎡ 月50万円」以上の物件がワンサカあるというのに。
貧富の差はこういうところにまだまだ残っています。
日本の公団住宅と同様の「労働者」向けの安価な住宅もありますが、うちの田舎の近くでは400sqf(≒40㎡)で5万円前後。ワンルームマンション5万円って高い?安い?決して安くはないですよね。公共の廊下も暗くて日本人の一人暮らしは最初怖いでしょ(っていうか、外人は借りれませんが(笑))
日本人が通常住む街中・2ベッドルーム・守衛完備で600sqf(60㎡)HKD8000〜というのが最近の情勢かと思います。
それに引きかえ...ウチのスタッフに聞いたら、夫婦で200sqf(20㎡)未満..四畳半にキッチン??HKD1500(≒22,500円)という部屋に住んでいる人もいます。なんか涙出てきそうです。(泣)
とにかく香港人の住環境は大変なものがあります。
先日、引越ししようかと思い、色々マンションの売り物件を見て回ったのですが....

●なぜか売り物件は『北向き』が多い。
●しかも450sqf以下のものが多い(45㎡) どういう感じかというと、
  ○寝室は2つ、どちらも3畳くらい。でも収納は無い。
  ○リビングには中国でよく見かける、赤いおおぶりの神棚が備えてあって余計に狭く感じる
  ○そこに5〜6人家族で住んでいるという。。。
  ○当然子供の勉強机などという「スペース効率」の悪い・使用頻度の少ないものはなし
日本の住環境も決して良いとは言えないかもしれませんが、香港は更に深刻です。
中国の都市部も似たような現象のようですね。

ヘタするとトイレやリビングなどの家族利用のスペース除くと、「寝て一人あたま一畳」ということが当たり前のようです。
だから、休日になると狭い家を出て「飲茶」で4時間座り続けたり、用もなくショッピングセンターをブラブラするらしいのです。
香港人に聞いてみると「もちろん土地付きの家」が欲しいのだそうです。
しかし、香港・中国とも基本的に土地は国のもの。一部の豪族の様な家系が優先使用権みたいなものを持っていますが、ほんとうに一部の人々だけです。
ですから香港の一般の人にとっては「家」は代々受け継ぐものではなく、「売り買い」するための一時の資産でしかありません。日本も借りた方が得....という考えの人が多くなってきていますが、どこかに先祖代々の田舎があり、まだまだ「家は守るもの」という観念が残っていると思います。
香港の人のほとんどは大陸からの移動者も多く、田舎があるが「大陸」に。。。
言い換えれば「香港に自分のルーツとなる土地」がないのです。
香港を例えて「カジノボート」になぞらえる人がいますが、実際そう考えることが合理的なのでしょう。
「一発当てて、自由をつかむための運を試す場所...」それが香港なのかも知れません。

しかし...誰しもいつかは老い・朽ち果てていくもの。
今日の写真は香港の「お墓」です。(一応香港人の友達に撮影していいか確認しました。ハイ)
こうやってお墓がもてるのもごく限られた「旧家」の人達だけのようです。いえ、旧家であってももういまは「新しいお墓」を認められにくいそうです。ではどうするのか?私はまだ見たことありませんが、日本にもある「カプセル型お墓」や「集合墓」スタイルしかないそうです。
「お墓」って辛気臭く感じるものですが、反面「自分のルーツ」を感じさせてくれる記念碑でもありますよね。香港の人達にとってお墓をもてないのはどうなんだろうかと思います。

だからでしょうか「生きている間に親族をすごく大切にする」のは。死んでからのお墓より、生きている間の孝行。。。
考えさせられます。

南無阿弥陀仏。。。ここを押してやって下さい。